『menu』が世界一になるためには。東大卒・P&G出身の二ノ宮が見据える、フードデリバリー市場の攻略法
こんにちは、レアゾン・ホールディングス人事本部の赤岩です。 今回は東大、P&Gを経て、レアゾンHDへ入社した二ノ宮さんにお話を伺いました。幼少期のエピソードや、実はその幼少期に形成されたものが今のお仕事にも繋がっていること、など、今まであまり聞くことができなかったお話をしていただいています。 また、『menu』だけではなく、フードデリバリー市場全体を見てどう感じているかという更に広い視点で二ノ宮さん自身の考えを伝えていただきました。今後みなさまが事業に携わっていく上で、少しでも参考にしていただければと思います。
東京大学工学部卒、同大学大学院中退。在学中に、C to Cのマッチングサービスを立ち上げ、学生起業。大学院中退後 、外資系消費財メーカーのP&Gに入社しシンガポールに赴任。6年間、ブランディングや自社メディア運営などに携わる。2019年にレアゾン・ホールディングスに入社し現職。グループ全体のマーケティング部を統括している。
ダイナミックなフードデリバリー市場で『menu』が飛躍するための取り組み
早速ですが、二ノ宮さんの現在の仕事内容についてお伺いします。管掌領域は多岐に渡ると思いますが、どんなお仕事に携わっているのか教えていただきたいです。
フードデリバリー事業の『menu』を飛躍させるために、ユーザーのこと、サービスのこと、組織のことを考え、より深いユーザー体験とより大きな事業規模の実現に向けて、様々なチームを巻き込みながら日々試行錯誤しています。特に私は、ユーザー(アプリでデリバリーを注文してくれる一般消費者)と配達員(menuのデリバリースタッフ)に向き合うことが多く、どうしたらユーザーや配達員が『menu』を利用してくれるか、満足してくれるか、ということを考えながら仕事をしています。
ユーザーや配達員の利用・満足度向上のために、具体的にどんなことに取り組まれているか教えてください。
そうですね。フードデリバリー市場は今ものすごいダイナミックに立ち上がっており、各プレイヤーが多額の資金を投資しているフェーズです。なので、この市場が現状どうなっているのか、その中でユーザーがどのような体験を求めているのかなど細かい部分まで理解し構想する必要があります。その上で、ユーザーの期待に応えるためには『menu』がどのようなサービスであるべきか、どういうプロダクトであるべきか、どのようなコミュニケーションを取るべきか、どのような運営をするべきかなど、各チームと一緒にアクションプランを練っています。
また、多くのプロジェクトが同時に進行しているので、関係者がきちんと働くことができるような環境の整備や、適切な人材の配置、お金の準備、何かしら困ったことが生じたときの課題解決など、1つのプロジェクトを見ているというより全体を動かしていくことが多いです。そして、目指す事業・サービスを実現するために、どのような人を採用すべきなのか、それらの人達がどのようなスキルを持つべきなのかを定義し、そのような人達が集まりキャリアを作っていくための、プロセスやトレーニングモジュールなどあるべき環境も設計しています。
前回、丹羽さんのインタビューでもお話が出たのですが、重要なことはやはり“人”なのですね。ちなみにトレーニングモジュールを作成する上で意識していることはありますか?
スキルを身に付けるために、自らアクションを起こしてもらうような実践型のトレーニングになるようにしており、「7:2:1の法則」というものを基にしています。この法則は、人が成長する上で何からどの割合で学ぶのかを示す数値となっており、7割は「経験」、2割は「フィードバック」、1割は「座学」から学ぶと言われています。ですので、理論体系などをインプットしてもらう「座学」、「〇〇を期待しているから、もっと××のように仕事をして欲しい」といった「フィードバック」を繰り返しながら、結局は経験を積んで貰うことでスキルが身に付いていくと考えています。
今のお話を聞いていると、人によって期待することも異なるので、個々に合わせてトレーニングを設計されているような気がしたのですが、実際いかがですか?
そうですね。もちろん共通する部分もあるのですが、個々で設計している部分が多いと思います。事業や組織の状況はものすごい勢いで変化しており、その時々に応じて組織や個人に求められるものは変わってきます。そのため、状況に応じて身に付けて欲しいスキル要件を検討しつつ、プラスでその人の強みや好みなどを考慮している、というのが実情に近いかもしれません。
持ち前の知的好奇心から東大・P&Gを選択し、そこからなぜレアゾンを選択したのか?
ここで少し、二ノ宮さん自身のお話について聞かせてください。今お話を聞いていて、仕事において「考えている時間」が非常に多いと感じたのですが、元々物事を考えることが好きだったのでしょうか?何かきっかけなどあれば教えていただきたいです。
はい。私の今までの人生を遡ると、知的好奇心が旺盛で、昔から物事の成り立ちが非常に気になるタイプであったのではないかなと思います。物心つく前から複雑なものの構造が気になってしまう性格で、幼い頃は父親のビデオカメラや靴が好きだったようです。
そして、中学3年生くらいのタイミングで生命科学の分野に強く興味を持ち始め、当時は、将来は生命科学者になりたいと思っていました。人体はものすごい数の細胞が絡み合って作られているという複雑性に面白みを感じたことが理由です。やはり幼少期から変わらず、複雑な事象に対しての強い興味・関心は一貫して持っていました。
大学入学後は、バイオエンジニアリングを専攻していたのですが、大学4年生の時にある転機が訪れました。東日本大震災の影響で計画停電が実施され、研究施設の稼働がストップしてしまったのです。全く研究が出来なくなってしまい、何か研究以外のことをしてみようと思ったタイミングで、ちょうど理系学生向けのビジネス講座のようなものが開催されていました。時間もあったのでその講座に参加したところ、初めてビジネスの世界に触れることができました。
今までビジネスの世界というのは、自然科学にあるような複雑な世界ではなくもう少しシンプルで俗世間的なものだと思っており、距離を置いていました。しかし、実際にビジネスの世界に触れてみると、様々な人間がうごめいていてものすごく複雑ですし、超ダイナミックな世界が繰り広げられていることを知り、面白みを感じるようになりました。
ビジネスの世界を知ってから、二ノ宮さんの中で何か変化はありましたか?
ビジネスの世界に興味を持ち始めて色々と考えていく中で、もしかすると自分の肌にあっているのではないのかと思うようになり、学生時代に起業しました。そして、就職活動のタイミング。ビジネスには、エネルギーからWebサービス、八百屋まで様々な産業がありますが、結局共通している根幹の部分は「ユーザーにどのような価値を提供するのか突き詰めることではないのか」と思い、ファーストキャリアではそれを追究できる会社に行きたいと考え、ユーザーへの提供価値を意思決定の中心にすえていることを打ち出していたP&Gに入社しました。P&Gでは想像通り、消費者への価値提供について体系的に学ぶことができ、非常に素晴らしい環境であったと思います。
P&Gでは貴重な経験を積むことができたのですね。ではなぜ、そのような素晴らしい環境にいた中、レアゾンへ転職されたのでしょうか?
P&Gには約6年間在籍していたのですが、扱っていたカテゴリが消費財で、絶対になくならない生活必需品の市場ということもあり、ITなどもう少しダイナミックに拡大していく市場に関わりたいとぼんやり考え始めたことがきっかけです。元々IT系で起業をしていたこともあり、もう1度ダイナミックかつ複雑怪奇な領域で自分の力を試したいと思うようになりました。
シンガポール赴任から帰国するタイミングで、転職活動のようなものをしていたのですが、自分が描いているイメージとマッチする会社にはなかなか出会うことができませんでした。そんな中、レアゾン代表と、学生時代の先輩(レアゾンの社員)と飲みに行く機会がありました。話を聞いていく中で、レアゾンでは、非常にスケールの大きいことを、非常に少ない人数で、圧倒的なスピード感を持って実行するという、日本の市場では比類ないようなレベルでビジネスを拡大していることを知りました。率直に面白そうな会社だなと感じたことを覚えています。当社のビジョンでもある「世界一の企業へ」に対して、1直線に全速力で走っていてシンプルに楽しそうだと思いましたし、自分が描いていたダイナミックな世界とマッチする会社だなと思ったことで、レアゾンへの入社を決めました。
フードデリバリー事業の立ち上げで再認識したレアゾンの面白さ
ダイナミックな世界に戻りたいという思いからレアゾンへ転職された二ノ宮さんですが、今までの経験でダイナミックさを感じたエピソードはありますでしょうか?
本当にゼロの状態から始めたフードデリバリー事業の立ち上げは、おそらく今後私のキャリアの中で出会うことはないのではないかと思うくらい、非常に印象深い経験でした。新規事業というのは、生半可な努力でできることでもないですし、優秀な人たちが極限まで息切れをして、更に極限まで切り抜けることでようやく立ち上がるものです。それを自分自身が経験できたことはとても貴重なことだと思いますし、立ち上げ当時から時価総額1兆円超規模の強烈な競合がひしめく中、無名のベンチャーがその市場に立ち向かうということは非常にエキサイティングだったと感じます。
強烈な競合が多くいる中で、現在『menu』は国内第3位まで浮上しましたが、その要因は何だと思いますか?
本当に多くの人たちの努力の結果であり、様々な要因が重なった結果ですが、大きく2つあると思います。
1つ目は、事業開発力です。フードデリバリー事業は関わる事業変数が多く、難易度が高いです。強い営業力・プロダクト開発力・運営力など多くの要素を組み合わせて、事業をゼロから一気に立ち上げられるということは、やはり1つの強みとして持っているところだと感じます。
2つ目は、KDDI社の存在です。時価総額1兆円を超える外資系企業が蠢いているフードデリバリー市場の中で、『menu』は運営会社のスケールがないというところが課題でした。そこに、当社のビジョンに共感していただける、日本有数の巨大企業であるKDDI社という大きなパートナーと出会えたことは、非常にインパクトのある出来事でした。
フードデリバリー業界はかなり盛り上がっていますが、今後どのように拡大していくと思われますか?
それこそ多様化していくのだろうと思っています。
デリバリーというものが産声をあげたのは本当にここ数年の話で、それまでデリバリーは、主に宅配業態を持っているチェーン店が行っていました。そんな中、コロナ禍の影響で、個人店なども一斉にデリバリーを始め、デリバリーする店舗の選択肢が急増したことで、様々な可能性が広がってきています。例えば、今はデリバリーというと、お腹がすいた時に飲食店のごはんを注文するということが主かもしれません。しかし今後は、3時のデザートで何か食べたいなという時にフードデリバリーを利用するという体験や、以前流行ったオンライン飲みで、お酒だけは近くのスーパーで購入し、気になるおつまみを複数店舗からデリバリーして自分だけの“ちょっと良い飲み会”をするという文化が生み出されるかもしれません。
また、最近はフード以外のデリバリーも始まっているので、更に新しい体験を生み出すことが出来ると想定されます。フードデリバリーという新しい産業が立ち上がり、現在は可能性の幅がどんどん拡大しているフェーズだと思うので、この状態がまだまだ続いていくのだろうと私自身は感じています。
まだまだ可能性を秘めているフードデリバリー市場ですが、その市場で今後戦っていく上でいま抱えている課題はありますか?
やはり人材不足ですね。世界一を目指す上で、少なくともまずは組織は日本一でなくてはいけないと思いますし、そのためには優秀な人材の採用や今いるメンバーの育成は重要です。強い組織を作るためには、その人が最終的にポテンシャルを最大限発揮できる瞬間をどう作れるか、そのために自分はどう貢献できるか、ということを常に考えています。
強い組織を作る上で、採用・人材育成などに力を入れているということですが、レアゾンではどんな素質を持っている人が活躍すると思いますか?
主に3つだと思います。
①好奇心
ユーザーについて、事業について、市場についてなど、様々な物事に対して深く理解しようとする能力や姿勢が重要です。
②オーナーシップ
自分が携わっている領域を自分ごととして捉え、当事者意識を持ってきちんと物事に取り組むことが出来る人は成長していくと思います。ベンチャー企業なので状況の変化が激しいですし、1人1人に期待される役割も大きいためです。
③素直さ
一番大事なことは「素直さ」だと思っています。挑戦しなくてはいけないことのハードルは日々高くなるので、毎日何らかの学習をしないとそもそも期待される役割に到達できないということは大前提だと思います。
自分の実力不足に真正面から向き合い、その実力不足に悲観するのではなく、今求められていることをきちんと理解して、あらゆることにチャレンジして吸収していくことが重要だと考えます。
まずは“日本一のサービス”、そして“世界一のサービス”を目指す
何事にも興味を持ち、物事を自分ごととして考え、自分にしっかりと向き合うことが成長に繋がるということですね。では、最後に二ノ宮さんが今後挑戦したいことについて伺いたいのですが、何か目指しているものはありますか?
近いところで言うと、まずは「日本一のサービス」を作りたいと思っていますし、ゆくゆくは当社のビジョンにもある通り、「世界一のサービス」を作りたいと思っています。
先ほどお話したように、フードデリバリー市場はものすごく大きくダイナミックに移り変わっていますし、競合も多く存在し、各社一生懸命日本のフードデリバリー市場にマッチしたサービスを作ろうとしています。その中で、『menu』が最もユーザーに寄り添い、満足してもらえるようなサービスを作りたいと思っていますし、達成したいと本気で考えています。
ちなみに、「世界一のサービス」を目指したいというお話でしたが、世界一に辿り着いた先に何があると思いますか?
私自身の考えにはなりますが、世界一になること自体が目的化しているので、世界一の先には何もないと思っています。「なぜ世界一を目指すのですか?」と質問されたら、「一番を目指すことが一番大変だろうし、でも一番楽しそうじゃないですか。」と答えると思います。複雑で面白いビジネスの世界に飛び込んだ以上、その中で一番を目指すということ自体に楽しさを感じています。おそらく幼少期から続く知的好奇心から派生しているものだと思います。
二ノ宮さんの今までのご経験や、いま取り組まれているお仕事、そして将来思い描いていること、これらは全て幼少期から持っている知的好奇心から来ているものなのですね。やはり知的好奇心が成長に繋がるということを改めて認識しました。
本日は貴重なお時間ありがとうございました!